++久遠の時、あなたを想う++
私があなたを失ったのは、私が無力な幼子であった頃。 その頃、あなたは私の世界のほとんどを占めていて、私の小さな世界の中で、あなたは誰よりも輝き、誰よりも大きな存在でした。 あの日のことを、私は一生忘れないでしょう。 「ムウ、お前を愛しているよ」 大きな温かい手で私を抱きしめ、優しい声で紡がれた言葉。 「ジャミールへ行きなさい。 私の全てを支配するあなたの言葉に、どうして逆らうことができようか。 いつもよりも蒼白な肌のあなたを見ても、いつもより強く抱きしめられたことに気付いても、いつもよりゆっくりと紡がれた言葉、そこに架けられた想いの強さに心がはちきれそうになっても、私には、あなたの望むことしかできなかったのです。 あなたの小宇宙を感じることができなくなっても。 その言葉は永遠に私を縛り付けて離さない。 たとえ誰も、あなたの存在に気付かなくても。 私があなたを忘れることはありません。 それは変わることのない永遠。 だから。 シオン――。 もう一度、私を呼んでください。 その愛しい声で。 私を抱きしめてください。 それは、叶わない願い。 それでも、願う。 あなたの声に呼ばれたい。 今日も私は想い続ける。 想いはどれだけ強ければ、天に届くのでしょうね。 この心の空虚は、決して埋まることはありません。 あなたは、私の全てなのだから。 ねえ、シオン―――。
-end-
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<2002年11月>